近況コラム



2003年7月31日号

心のリハビリ最終章 『記念すべきメンスカデビュー』

※メンスカ=メンズ・スカートの略

 心のリハビリを開始して約1年が経ちました。 その間、脱毛症は順調に回復、と言いたいところですが、実際のところ、治りは遅いのが現状です。 今の状態は、ピーク時に比べれば若干良くなってきたかな、という程度であり、治ってきたかなと思えば、まだ治っていない…と落胆する、ということの繰り返しです。
 特に、頭頂部は全くといっていいほど変化がなく(写真参照:7月下旬)、完全回復というにはまだまだ程遠い状況で、もうこんな状態が一年近く続いています。
 もともと男性型脱毛症の場合、その発症の背後には10年〜20年の歴史を抱えているのが通例です。 わたしの場合もどうやら10年位かけて緩やかに進行したようで、ある日、思い直して5年くらい前の写真を見てみたところ、もうその頃から薄くなり始めていたようなのです。 ただ、当時のわたしはそのことに全く気づいていませんでした。
 こうしたことから、その間の生活状況や心理面の変化などを含め、その発症のメカニズムを掴むためには膨大な量の検証をしなければならず、原因を探ること自体が大変な作業なのです。

 それでも一応、思い当たる節はこれまで全部当たってきました。 例えば、これまでのわたしは、自分の本当の欲求を押し殺して必要以上に周りに合わせる性格であったことや、あるいは子供っぽく見られることや実年齢よりも若く見られることが内心では嬉しいはずなのに、恥ずかしくてかえって迷惑なふりをしてきたこと、また、自分が本来、女性的な感性を持った人間であったにもかかわらず、それを自ら抑圧し、考え方や服装など日常生活のあらゆる面で無理に男っぽくあろうとしてきたことなどです。
 これらのことを総合した結果、これまでのわたしには自分らしさを積極的に押し出していこう、もっともっと自分の理想を追求していこうという 「攻めの姿勢」 が全く欠けていたことが判明したのでした。

 「このままでは劇的な回復は見られない。 まだ何かが足りない。 いや、ひょっとしたら、自分にとっての理想の世界が実現するまで、この病気と付き合っていかなければならないのでは…」―そんな絶望的な思いがふと頭の中をよぎったわたしは、さらに考えを一歩進め、だったら、それが実現するために、まずわたし自身が自分の理想に最も近い位置にあるべきではないか、と考えました。
 理想の世界を頭の中で描くことは得意なのに、なぜかそれを現実の世界で応用しきれていない自分。 なぜか現実の世界では臆病な自分。―こうした事実が次々と明るみになった以上、わたしにとって真の悦びとは一体何だろう、第一希望は何だろう、何をすれば自分は一番楽しいのかということを探ることこそ、今のわたしに課せられている至上命題であると考えました。
 そうして、これまでの人生の中で、自分は何が一番好きだったのか、何が自分を一番わくわくさせたのかを自問自答して、ようやくたどり着いた結論、それは、

 「お前は古代ギリシャ人に憧れていたのではないか。 海のトリトンになりたかったのではないか」

ということでした。
 わたしの人生に決定的な影響を与えた漫画が 『海のトリトン』 と 『バビル2世』 なのです。 特に手塚治虫の 『海のトリトン』 は、小学生の時に読んで以来、主人公トリトンの生き方や外見的な格好良さなど、常にわたしにとっての第一希望であり続けました。 古代ギリシャへの興味も、もちろんここから始まりました。

 わたしが何かに遠慮していたのは、やはり世間体やら常識やらの周りからの目に見えない圧力のせいでした。
 実際ギリシャ人になりたいと言ったって、ギリシャ服なんて着たくても着れなかった…。 わたしはコスプレなどという生易しいものではなく、あくまで日常生活の中でいつも常に身につけていたかったからだ。
 しかし現実問題として、外見的主張を押し通すことは、言論的主張を押し通すことよりもはるかに難しいのです。 なぜなら、言葉は一時的ですが、外見は恒常的だからです。 だからこそ、それを実行するためにはより多くのパワーと勇気が要ります。 だからこそ、わたしには自信がありませんでした。 本来、外見的なものに一番興味が向いていたはず自分が、自身の外見については全く無頓着だったのは、こういうことだったのだ!

 だが、ここに至って、わたしにははっきりと分かりました。
 「今までのわたしは一体何をしていたのだろう。 何に遠慮していたのだろう。 もっともっと自分を出さなくてはダメだ。 外見的主張を押し通すことこそ自分にとっての最高の自己主張であり、より多くの悦びが得られるはずのものではなかったか。 だったら、形だけでもいいから一刻も早くギリシャ人になれるよう努力するべきではないか!」

 そうと分かれば話が早い。 現代でギリシャ服に一番近い格好といえばミニスカートだ。 実際、古代ギリシャでは男子はほぼ全員ミニスカートだったではないか。 これしかない!
 人は一度死んだつもりになると、何でも出来るようになるのだ。

6月10日
 さっそくネットで男のスカートについて検索する。 すると出てくるわ出てくるわ、かなりの数のサイトが男のスカートについて考察しているではないか。(ちなみに、「メンスカ」 という言葉はこの時初めて知ったのだった。)
 メンスカ専門のページをいくつか覗いてみると、やはり、世の中には上には上がいるもので、メンスカ歴20〜30年という猛者がざらにいるらしいことも分かった。 写真まで公開されているサイトもある。 実に心強いことだ。(ただ、そうした人たちを日常で見かけることは皆無なんですけどね。) 勇気をもらった感じだ。 ボクも頑張らなくっちゃ!

6月13日
 心のリハビリ最終章の実行開始。 さっそく近くの高円寺パル商店街にいくつかある古着屋さんを物色する。
 古着屋を見て周るなんて初めての経験だ。 もともとファッションに関しては人並み以上のこだわりを持っているわけではなかったわたしが、しかもミニスカート目当てに古着屋を渡り歩く。。。 ついこのあいだまでは想像もできなかったことだ。 店に入るだけでも緊張する。
 わたしの希望はプリーツミニかデニムミニ。(ちなみにプリーツとは 「ひだの入ったスカート」 のこと。 こんな言葉も今までは全然知らなかった。)
 そして、たまたま入ったとある店でデニムのミニスカを発見! しかし、手に取るだけでも心臓バクバク。(当たり前だ。 スカートを買うなんて初めての経験だからだ。 客がわたし一人だったのが幸いだった。) それでもあくまで冷静さを装い、サイズなどを確認。 「S」とあったが、まぁこれで大丈夫だろうと勝手に判断。(試着することも出来たが、とてもそこまでする心の余裕はなし。) 意を決して、早速レジへ持っていく。(これがまた勇気が要るのだ。)
 レジで店員さん(男)に 「暑いですからね」 といきなり声をかけられ、思わず 「ええ」 と小さく苦笑い。(恥ずかしーーーっ!><)
 お目当てのモンを買ったらもうこっちのもの、とばかりにそそくさと店を出て、アパートへ一目散に帰る。

 さっそく袋から取り出し試着。
 「スカートって面白い形しているよなぁ」 とか思いながら穿いてみる。 サイズはバッチリだった。 しかし、分かってはいるのだが、股がスースーするのだ、これが。 今までに味わったことのない感覚に、ちょっぴり感動! ただ、「ホントにこんなの穿いて外に出る気かね」 とも思う。 不安と恐怖がよぎる。
 しかも、ちょっと太目感は否めず。 実は引きこもり気味の生活がたたって、体重が増加傾向にあったのだ。(この時点で50ウンkg。) この時から気合いを入れて、死にもの狂いで全身の筋肉をガーッと緊張させ、さらに緊急措置として食事制限まで敢行し、目標体重43kgまで減らすことを決意する。

6月14日
 翌日、早くもコンビニデビュー。 迷いはなかった。
 本当はもっとスリムになってからデビューしたかったのだが、「そんな悠長なこと言っていたら、いつまで経ってもデビューできない!」 と自分を叱りつけた。 それに早くデビューして自分に活を入れておけば、今後の痩せようとする意欲にもプラスに働くはずと判断し、実行に移す決意をする。
 まずはファッションチェック。 今日はデビュー初日ということで、Tシャツ1枚にミニスカのシンプルなスタイルに決めた。 頭にはバンダナを巻く。 出かける前に鏡の前で入念にチェック。 もちろんすっぴんだ! 男が化粧をすると、いかにも女装っぽくなってしまうし、かえって老けて見えるからだ。 ただ、眉は手入れをした方が見栄えが良くなると思い、眉尻に向かって細くなるように毛抜きで整える。 ちなみにヒゲや体毛の処理はもう1年近く続けているから問題はなかった。(わたしの場合、ヒゲや体毛も一本一本抜いています。)
 じっくり時間をかけて、あらゆる角度から自分の姿を映してみる。 そして十分納得した上で、決意は固まった。 いざドアを開けて出発!(まるで戦場に行くような気分だ)

 スカートを穿いて初めての外出。(ちなみに足元は白の靴下にコンバースのハイカットという超若作りなスタイル!) シャツを外に出していたのでスカート自体は目立たなかったが、それでもスカートを穿いた自分を公衆の面前にさらすこと自体が恐怖だった。 本心は逃げ出したいくらいビクビクのガチガチ状態だったが、努めて堂々と歩くことにする。
 薄暗くなりかけた夕方、いつもは何気なく行くコンビニまでの道のりが、今日は異常に長く感じられた。 裏道なので、誰にも会わずに済んだのが幸いだった。

 コンビニが見えてきた。 お客は数人。 「ええい!」 とばかりに心の中で気合いを入れて、いざ中へ。 まずは気分を落ち着けるために立ち読みコーナーへ行く。
 雑誌を読んでみるも、ちっとも内容が頭に入らない。 周りばかり気になる。 途中から新たな客が入ってきて、さらに緊張が高まる。 しかし、何喰わない表情で自分の横に並ぶのを見て、なぜかホッとする。
 さて、次は買い物だ。 適当に2品ほど選んで、いざレジへ。(心臓がバクバク音を立てている。)
 レジの女の子は、一瞬 「えっ!?」 というような表情を見せたが、普段と同じようにレジを打ち、最後にありがとうございました、と言ってくれた。 店を出た時には、言いしれぬ開放感と達成感でいっぱいだった。 こうして記念すべきコンビニデビューは無事終了した。

 コンビニデビューは案外あっけなく終わった感があったが、自信は確実に付いた。 あとは行動の範囲を徐々に広げていくのみだ。 やったるぜ!

6月19日
 ここ5日間、メンスカでコンビニに何回か繰り出した。 その度に自信が付いてくるのが分かる。 立ち読みも堂に入ったものになったし、レジも怖くなくなった。 店員さんは相変わらず最初の一瞬だけこわばった表情を見せるが、後はいつもの調子でレジを打ってくれる。 むしろこちらはそうした反応を楽しむ余裕さえ出てきたといっていいくらいだ。

 こうなれば欲が出てくるのが人情というもの。 もっと人出の多い場所へ行ってみようということで、今回は自宅から阿佐ヶ谷の駅前まで歩いてみることにする。
 やや薄暗くなりかけた夕方、駅から帰宅する人が増えてくる時間帯だ。 根性を付けるためには丁度いい。 心と体をグイと引き締めて、駅を目指す。
 途中、自転車で通り過ぎるおばさん、OLさん、おじさん、いろいろな人に出くわしたが、必要以上に注目されることはなかった。(うーん、結構みなさん、通り過ぎる他人のことなんか気にかけていないんですかね。) かえってこっちが拍子抜けするくらい、あっけなく駅前に到着。
 駅前の本屋で立ち読みすることにした。 ここでも15分くらいいたと思うが、好奇の視線にさらされることはなし。 帰りは意気揚々と引き上げる。

6月23日
 本格的な人混み歩きの敢行を決意する。 目指すはここから数駅先の中野駅前のブロードウェイ商店街。 意を決して自宅のドアを開け、いざ出発! まずは阿佐ヶ谷駅へ繰り出す。 駅までの道のりはもう何のためらいもない。 10分弱で駅に到着。

 ここからが試練だ。 切符を買う、改札を通る、ホームまでのエスカレーターに乗る、すべてがハラハラドキドキの連続だ。 ホームに立つとさらに緊張感が増す。
 メンスカでは駅のホームに立つことも電車に乗るのも初めて。 メチャクチャ緊張する。 電車に乗り込むと、さらに緊張度はアップ。 車内での視線が痛い…かと思いきや、周りの乗客はほとんど注目せず、吊革につかまっているわたしの前に座っているおじさんも特に驚いた様子もなし。 これでずいぶんと緊張が和らいだ。

 ほどなくして中野駅に到着。 ここからさらに正念場が待ち受ける。 人混みでにぎわう商店街のど真ん中を歩くのだ。 さっそくアーケードの中へ。 わたしの場合、たとえメンスカであっても内股歩きのようなことはせず、堂々と歩くことにしている。 この方がかえって怪しまれないし、若々しく見えるからだ。
 これまでちょくちょく来ているブロードウェイだが、この日だけはなぜか感慨が違って、何もかも新鮮に見えた。(緊張感とスリル感のせいだろうか?)
 平日だったこともあって人影はまばらで、さほど混雑はしていない。 だからこそ、すれ違う人の視線が直に触れてくる。 しかし、思ったほど好奇な視線は感じられず、皆が皆、平然な顔をして通り過ぎていく。 また拍子抜けだ。 ガチガチに緊張している自分が滑稽にも思えてきた。
 しばらく歩いた後、3Fまで直通の長いエスカレーターに乗る。 その間、後ろがやけに気になった。 ミニスカだから当然といえば当然だが、こんな経験ズボンを穿いている限りないだろう。 ミニスカの後ろを隠しながら階段を上る女性の気持ちが、この時よく分かった気がした。(まぁ、ボクは男だから見られても別に構わないけど。)

 3Fに到着。 まずは、まんだらけで立ち読み。 ここでしばらく時間をつぶした後、奥の明屋書店へ行き、雑誌を立ち読みする。
 女性雑誌のコーナーで立ち読みしている時も、女の人が何食わぬ顔で隣に割り込んできたり、女子高生が後ろから雑誌を手に取ったりと、こちらが 「あれっ?」 と拍子抜けするくらい、全く注目されなかった。 おそらくわたしの身長が低い(158cm)こともあり、またもともと色白のせいもあって、違和感なく溶け込んでいたのでしょうか。
 ちなみに、わたしの人生の中で、この時ほど 「低い身長で良かったなぁ」 と思ったことはありませんでした。 わたしの本能はやはり高い身長なんか望んでいなかったのだ! わたしの肉体の成長が中学卒業と同時にピタッと止まってしまったのも、わたし自身の中の 「子供のままでいたい」 という強烈な思いが、わたしの身長を160cm手前でストップさせたのでしょう。

 もうここまでくればレジに並ぶのはなんてことはない。 雑誌を数点買い、そのままブロードウェイを後にする。 第一回目の本格的な人混み歩きも、まずは大成功だ。 こんなに順調でいいのだろうか。 またも意気揚々と帰途につく。

6月29日
 高円寺駅南口一帯の古着屋さんを散策。 欧風のトップスやデニムの切りっぱなし短パンなどを購入。
 もうこの頃になるとメンスカもだいぶ慣れてきて、ガチガチに緊張することもなくなった。 つい4日前も荻窪へ行ったし、人混みも怖くなくなった。 荻窪では夕方時でもあったせいで、駅で女子高生の集団と何回も出くわすはめになったが、特に変な視線を向けられたり、声を上げられたこともなかった。 ますますメンスカに自信を持つ。

7月6日
 メンスカで初めて新宿に繰り出す。 この頃には体重も49kg台に突入し、スカート姿も幾分様になってきた。 ミロード、サブナード、マイシティなどを散策。 いろんな店を見て回る。 休日でどこも人でいっぱいだ。 むろん誰もわたしのことなど注目していない。 自分がスカートを穿いていることなど忘れそうなくらいだ。 帰りは高円寺駅で降り、古着屋さんを見て周る。(新たにミニスカート数点購入。)

7月24日
 そろそろHP更新の時期が近づいてくる。 そこで早朝、自宅アパート前の路地で、HPに掲載するためのポートレート撮影を敢行。 この自宅前でのショットはどうしても撮っておきたかったものだ。 それに数日後に予定している街中での撮影の予行演習も兼ねている。
 実はうちのアパートは一階が大家さんなのだ。 しかも近所の人に見られるのもまずい。 幸いなことに、これまで大家さんにも近所の人にもメンスカ姿を見られたことは一度もない(と思う)。 なので、ゲリラ撮影さながら 「サッとやってサッと終わり」 にしなければならない。

 さっそく5時頃から準備に取りかかる。 外は今にも雨が降り出しそうな曇り空。 しかし、今後一週間は晴れ間が期待できないことから、贅沢も言ってられない。 撮影は6時ちょっと前を予定。 今日はごみの日ではないこともあらかじめ確認してある。 まずは三脚の用意、およびデジカメの設定。 そしてスカートに着替え、外に出る。
 幸い誰もいないようだ。 まずは道路の真ん中に三脚を立て、ピント調節。 あとはタイマーをセットして、いざ撮影、ってところがぁっ! 角の家のお婆ちゃんがちりとり片手に角を曲がってこちらの路地へ入ってきた! 実は曲がり角の向こうの方の垣根を掃除していたのが、こちらへ戻ってきたのだ! 三脚立ててポーズを取っているところをまともに見られてしまった! あわてて三脚を持って部屋に引き返す自分。 あーっ、びっくりした!

 最初のポートレート撮影は大失敗! とりあえず自宅前での撮影は非常に危険ということで今回は断念する。(変な噂立てられないといいけどなぁ。)

7月26日
 HP掲載用の写真撮影のため、高円寺、および中野へ繰り出す。
 まずは徒歩で高円寺パル商店街へ。 絵になりそうなところはないかなぁと商店街を歩き始めるが、まだ閉まっている店が多く(たしか10時半頃だと思ったが)、ちょっとがっかり。(今日は土曜日だが、商店街のお店っていつもお昼頃開くんだっけ?) とりあえず高円寺は後回しにして、電車で中野に向かうことにした。

 メンスカでは2回目の中野ブロードウェイ。 今日は写真撮影がメインだから、お店を見るのはほどほどに、場所の選定を始める。 しかし、思ったような場所に目星を付けられず、そのまま3Fへ。
 まんだらけは、来る前から撮影の候補地に挙げていた場所だ。 しかし、いざ写真を撮ってもらおうと通りすがりの人に頼もうとするのだが、これがなかなか勇気が要るんですよねぇ。 パッと見で優しそうな人に頼もうとじっくりと機会を窺うものの、これだ!と思う人がなかなか見つからず、そのまま立ち読みなどして時間をつぶしてしまう。(やっぱり三脚持ってくれば良かったかな?)

 とりあえず、まんだらけの前は後回しにして、気分直しに別の通路にある店などを散策。 そのうちの一軒でベルトなどを見ていた時、店のおばさんが声をかけてきた。 実に親しげな口調で商品の説明や値段などを丁寧に教えてくれる。 わたしは思った。 「そうだ、このおばさんに頼んじゃえ!」
 ちょうど茶色のベルトとサスペンダーが欲しかったので、それを買ったついでに、おばさんに 「あのぉ、写真を撮って欲しいんですけど…」 と切り出してみた。
 おばさんは快くOKしてくれた。 ただ、デジカメの扱いがよく分からないらしい。 「ボタンを押すだけですから」 と説明したが、なにやらそれでも分からない様子。 で、おばさんの計らいで、隣のお店の若いお姉さんに撮ってもらうことに。 その時に撮った写真が下の写真1。(クリックすると拡大します。)


写真1

 うーん、人に撮られるのが慣れていないせいか、ちょっとポーズがぎこちない。 しかも全体的に太目感が…。 この時点で48kgちょうどぐらいだったが、やっぱりあと5kgは減らさなきゃダメですね。 ともあれ、おばさん、お姉さん、どうもありがとうございました。

7月29日
 前回、あまりの写真映りの悪さに愕然としてしまったわたしは、ここ三日間、一日一食菜食主義に徹して一気に46kg台にまで減量。 そしてこの日、改めて写真撮影に挑む。
 前回と打って変わって今度は公園での撮影。 よくサイクリングに来る善福寺川公園だ。 自転車で行けば10分かそこらの距離だが、ミニスカで自転車に乗るわけにも行かず、結局歩いていくことにする。

 平日の午前9時、空は曇り空。 本当は晴れた空の下での撮影を希望していたが、梅雨のまっただ中でそれは望むべくもなし。 それに、今日はお昼頃から雨が降り出すとの予報。 急がなくてはならない。
 程なくして公園に到着。 今回は、三脚を使っての本格的な自分撮りに挑戦。 遠慮なく撮るぞー!と気合いを入れながら場所選びに取りかかる。

 まずはコンビニの近くにあるブロンズの少女像のところへ行く。 さっそく三脚をセットし撮影開始。 その時のショットが下の写真2。

写真2

 ちょっと表情が硬いが、初めての野外撮影にしては上出来だろう。 よぉし、この調子で次も行くぞ!と意気込んだ矢先、早くも霧雨が降り出してきた。 まずい、急がねば!

 次の目的地は和田堀池の噴水前。 霧雨がだんだんと小雨に変わってきた。 雲行きはいっそう怪しい。 早足で和田堀池へと向かう。

 前にここに下見に来た時、ここの背景がベストだなと事前に決めておいたのが、この和田堀池の噴水を背景にしたショットだ。 さっそく三脚をセットしピント合わせ。 構図も決まり撮影開始。 その時のショットが下の写真3、写真4、写真5、写真6。
 ちょっと逆光気味になってしまったが、この日撮れた写真の中では一番気に入っているものだ。 課題としてはもっと自然に笑顔が出せるようになればと思う。 でも良かった、いい写真が撮れて!


写真3

写真4

写真5

写真6

 ところが、雨がだいぶ大降りになってきた。(これからという時に!) 本当はもっとあちこち回って撮りまくるつもりだったが、ここで切り上げることにする。 うーん、無念だ。 梅雨空が恨めしい。(一体いつになったら梅雨明けするんだろうか。)
 だが、自分が選んだ最高の場所での撮影が無事完了したので、満足感と達成感でいっぱいだ。 これから帰ってHPの更新作業のためにまた一仕事だ。 途中、図書館で雨宿りした後、お昼頃自宅に着く。

メンスカデビューで得たもの ―ここまでを振り返ってみて―

 以上、メンスカデビューの道のりを簡単に振り返ってみました。 すべてが新鮮な体験で、今まで自分が知ろうともしなかった新たな世界を垣間見た気がしました。 それと同時に、自分が今までいかにくだらない常識に縛られていたかも身をもって感じました。 いや、正確に言うと、自分で自分の心の中に造り出した巨大な影に怯(おび)えていて、本当の自分を出したくても出せなかった、と言うべきなのでしょう。

 「男がスカートなんて…」 というのが通常言われている世間一般の見方だと思います。 しかし、実際ここまでメンスカで何回も街へ出てみましたが、行く先々で表立って悪意ある視線を感じることはありませんでした。 むしろこちらが拍子抜けするくらい、人々の反応は冷静で落ち着いたものでした。
 もちろん男がスカート穿いている姿を快く思わない人も中にはいたかも知れません。 今までの自分はそうした人々の悪意の方ばかりがよく見えて、自分の本当の欲求を抑えつけることばかりに汲々としていました。 そんな周りの反応をいちいち気にしすぎて、あまりにも自分を抑えつけてきたのが、今までのわたしだったのです。
 だが、これからは違います。 あくまで自分のやりたいことを押し通すのみです。 そうすることが自分自身の幸福にもつながるし、また自分と同じような価値観を持っている人へ勇気を与えることにもなるからです。
 世間に向けて自分の主張や価値観を受け入れてもらいたかったら、周りの反応など気にせず、ただひたすら自分の幸せに向かって一生懸命努力すること。 やはりこれが一番大事なのだ。

 メンスカデビューをきっかけとして、自分自身のダイエットにも真剣に取り組むようになりました。 今までは自分のダイエット理論を過信していて、運動や食事療法などを全く軽視していましたが、それらも筋肉緊張ダイエットと併用すれば絶大な効果を上げることを身をもって体験しました。
 食事について言えば、今までのわたしはやはり食に対する執着がかなりあったことも分かりました。 つまり、体が要求する量よりもかなり多くの量を食べていたのです。
 メンスカデビューを果たしてからは、極端な話、一日一食でも足りるようになりました。 腹が減らなくなったのです。 というより、痩せる悦びの方が大きくなったので、「我慢する」 という感覚が無くなったのです。 これはわたしの中では大いなる進歩でした。
 また、体重が減ってきて体が軽くなると、筋肉の緊張も持続させやすい、ということも分かりました。 以前は、緊張を持続させようとすると、極度の疲労感を感じたりして苦痛以外の何物でもありませんでしたが、その疲労感も少なくなって、快調に筋肉の緊張を持続できるようになりました。
 ちなみに、食事制限を行うと基礎代謝が低下するので思ったほどの効果が得られない、というのが定説ですが、わたしの場合は筋肉の緊張を常に維持していたおかげで代謝率の低下を防ぐことができ、ほぼ1週間に−1kgの割合で順調に痩せることができました。

 やはり、第一希望を実行すると何から何までいいことずくめで、すべてが良い方向に進み、やればやるほど生きる悦びやエネルギーになるのです。 逆に、第一希望と関係ないことばっかりやっていると、すべてが狂ってきてしまい、何をやっても悦びや満足感が得られず、やがては取り返しのつかない状況にまで追い込まれることになります。 今のわたしの現状はまさにそのことを雄弁に物語っています。
 そうした今までの間違った生き方を改めるために始めた心のリハビリもついに最終章に入りましたが、これはもはや単なるリハビリの域を超えたものであり、生き方そのものなのです。 もし 「いつまで続ける気?」 と言われれば、「もちろん永遠に続ける!」 と答えるでしょう。

 第一希望へのあくなき探求は生きている限り永遠に続きます。 決して終わることはありません。 これがすなわち、わたしにとって 「生きている」 ということそのものです。 この探求を止めたとたん、わたしの人生は下降線を辿り始めます。 ゆえに、生はいつでも必ず上昇していなければならないのです。
 もちろん確実に上昇しているという保証はどこにもありません。 一寸先は闇です。 しかし、たとえ今行っていることがすぐには効果が現れなくても、それが5年後、10年後の幸せに必ずつながると確信できるならば、わたしはそのような地道な生き方をあくまで貫いていきたいと思っています。


『かんたん!筋肉緊張ダイエット』管理人:Tarchan




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